「ひどい試合だなあ。日本代表の試合じゃなかったら絶対に見たくないな」一緒にテレビでこの試合を観戦していた同僚からはこんな感想が飛び出るほど、昨日の日本-クロアチア戦は盛り上がりに欠けるゲームとなってしまった。後半も20分を過ぎると両チームとも選手の足が止まり、そこからはだらだらとパスミスやシュートミスを繰り返す展開。30度近い暑さの中の試合ではしょうがないと言えなくもないが、何人かの解説者やサッカー協会関係者がテレビや新聞で言っていたような「戦う姿勢」は、おそらくほとんどの日本国民が感じられなかっただろう。
日本は前半から試合を支配される。ポゼッションでは有利にたつものの、クロアチアの固いDF陣の前にシュートまでたどり着けず、逆にカウンターを食う場面が目立つ。クロアチアは右サイドのダリオ・スルナを中心に攻撃を仕掛ける。対面となる日本の左サイドバックは三都主。ドリブル突破を警戒していたためか、ややスルナから距離を置いてディフェンスにたつ。その結果チェックが甘くなり、スルナに危険なクロスを何本も放り込まれる。さらにロングスローやコーナーキックなど、クロアチアは日本との体格差を生かし、強引にゴールを割ろうとする。しかしクロアチアの攻撃陣も決定力に欠け、シュートはなかなか枠を捉えきらない。
そんな日本に最大のピンチが訪れる。前半21分、宮本恒靖がペナルティーエリア内でファールを犯し、PKを与えてしまう。キッカーはスルナ。シュートは地を這うような弾道でゴール左隅に飛ぶ。決して悪いシュートではない。しかし川口能活がそれを上回る素晴らしい読みと身のこなしを見せた。川口の左手に弾かれたボールは枠を外れ、ゴールラインを超えていった。川口は手をたたき雄たけびを挙げた。失点を覚悟したであろう日本のイレブンが次々と川口に抱きつく。あの中田英寿までもがだ。それほどこのPKを止めたのは大きかった。
その後も日本は続けざまにピンチを迎えるものの、何とか前半を無失点で乗り切る。そして後半5分に最大のチャンスが訪れた。右サイドから加地亮がドリブルでボールを持ち込み、ゴール前の高原直泰とのワンツーでDFを一人かわし、ペナルティーエリアに侵入。マークにつかれながらも、ゴールラインの寸前でグラウンダーのクロスを入れる。そこに走りこんできたのは柳沢敦。クロアチアGKのスティぺ・プレティコサは加地に引き付けられて、ゴール正面はがら空き。ただちょんと触れるだけでゴールは確実だった。しかし柳沢のシュートは力なくGKの股を抜け、枠から外れていった。そしてこれ以降両者に決定機は訪れなかった。
結局試合は0-0のスコアレスドロー。この結果に「望みをつないだ」という報道もされたが、その「望み」とは、オーストラリアがクロアチアに勝つか引き分けるかして、さらに日本が世界最強のブラジル相手に2点差以上をつけて勝つこと。しかもキャプテンの宮本を累積警告で欠くなかでだ。可能性は限りなく0に近い。
日本が絶望的な状況に追い込まれてから6時間後、韓国代表とそのサポーター達は喜びを爆発させていた。何と98年大会の優勝国フランスを相手に、1-1のドローに持ち込んだのだ。
後半36分、右サイドのソル・ギヒョンがドリブル突破からゴール前に素晴らしいクロスを挙げる。それをフランスのDFに競り勝ったチョ・ジェジンがヘッドで落とし、こぼれたボールをパク・チソンが押し込んだ。パクが精一杯伸ばした右足にあたったボールは大きくバウンドし、ゴールの左サイドネットにパサリと落ちていった。
前半9分、ティエリ・アンリに先制点を奪われてからも韓国はゲームを諦めず、最後まで走りぬいた結果グループリーグ突破に大きく前進する勝ち点1を獲得した。4年前とあまりにも似ている。日本がトルコに敗れ、姿を消した02年大会の決勝トーナメント一回戦。韓国はその数時間後に強豪イタリアを延長戦にもつれ込む大激戦の末下し、その勢いのままベスト4に進出。先制点を許しながらも、どこか淡白だった日本の攻撃陣。FWを6枚投入してまで必死になって勝ちに行った韓国。日本と韓国の差はあの4年前から縮まっていなかった。
自国開催で見せた勢いをこの大会にも持ち込んだ韓国。そして敗戦の教訓を生かせなかった日本。同じ引き分けでも、その中身は両者が4年前で得たものの違いを如実に物語っていた。