9月4日はアイススレッジホッケー東京大会2005。
モリタスポーツから色々とお話を聞いていた
東京アイスバーンズが主催する大会ということで、観戦に行ってみることに。しかしその日は前日から某編集部で徹夜の校了作業。朝の7時にようやく終わり、そのまま東大和スケートセンターへ。睡眠不足と疲労により、一度駅を寝過ごすも、何とか試合開始前に到着。やばい、寝そう。
フラフラする足取りでスケートセンターに入ると、眠気が一気に覚めた。寒!なんと残暑厳しい島国の中にあって、その中は吐く息も白く煙るクール・ビズ無用の世界。内外の推定温度差は15~20℃。そりゃあ、縦60m、横30mのアイスリンクを使う場所ですからねえ。よく考えれば会場の気温がかなり低いことは容易に予想がついたはず。私以外の観客は皆防寒具やタオルケットを用意して、万全の応援体制。Tシャツ一枚にジーパンといういでたちの私は、クーラーボックスに入れられた魚の気分を存分に味わったのであった。
観客の一人からタオルケットを一枚借りて、何とか寒さをしのぎつつ試合開始を待つ。会場にはノリのいい音楽がかかり、選手や観客の気持ちを盛り上げる。QUEENの「I was born to love you」や「We Will Rock You」。さらに映画「ミッション・イン・ポッシブル」や「ゴジラ」のサントラまで。その雰囲気はアイスホッケーの本場、アメリカを思わせる。
ここでアイススレッジホッケーの説明を一つ(といっても私も素人だが)。ルールは基本的にアイスホッケーとほとんど変わらない。オフサイドやアイシング・ザ・パックのような反則もそのまま。試合時間は各15分の3ピリオド制で、合計45分。最大の特徴はなんと言ってもソリのような形をしたスレッジと、2本のスティックだろう。競技者はスレッジに両膝を伸ばした状態で座り、2本のスティックの反対側にあるピックの部分で氷を押して前に進む。パックを打つ、前に進むという2つのプレーを2本のスティックで行うため、普通のアイスホッケーよりもパックコントロールは難しそうである。
さて、ルールを読めばここまではわかるのだが、どのようなプレーが行われるのかは実際に見てみないとわからない。初めて目の当たりにするアイススレッジホッケー。それは思っていたよりもずっとパワフルかつスピーディーな競技だった。ジェット機のうなりにも似た、スレッジが氷をこする音。パック際の争いでは激しく接触して転倒する選手が続出。壁に激突するプレーなどは思わず顔をしかめたくなる。もともとアイスホッケーの売りは激しいプレーであり、それはアイススレッジホッケーになってもなんら変わらない。氷の上は、どこよりも熱い。
この大会最後となった東京アイスバーンズ対長野サンダーバーズの試合は一進一退の攻防が続いた。先制点はアイスバーンズ。第1ピリオド2分10秒、長谷川選手のアシストから安中選手が早くもゴールを奪う。サンダーバーズも黙っていない。第2ピリオド4分10秒、ペナルティーによる数的有利を利用して、遠藤選手が同点ゴールを決める。そして1対1のまま第2ピリオドも終了。勝負の行方は最終第3ピリオドに持ち越しとなった。
戦いはより激しさを増し、時間は刻一刻と過ぎていく。次の1点がどうやら決勝点となりそうな空気だ。シュート数ではここまでアイスバーンズが17本と、サンダーバーズの8本を圧倒しているが、そこまで一方的な展開ではない。4分17秒、ゴール前の混戦の一瞬の隙を突いてアイスバーンズの遠藤選手が絶妙のパス。それを佐藤選手が決めてついにアイスバーンズが勝ち越しに成功する。さらに13分9秒、再び遠藤選手のアシストから柴選手が駄目押しゴールを決める。会場が一気に沸く。勝利を確信したアイスバーンズファン。最後まで声援を送り続けるサンダーバーズファン。試合はそのまま3対1で、終了のブザーが鳴った。
試合の後はアイススレッジ体験会。アイスバーンズの選手たちは試合が終わったばかりだというのに、子供をスレッジの上に乗せて元気いっぱいに氷の上をすべる。私もアイススレッジをちゃっかり体験。目線が下がるせいか、普通のスケートよりもスピード感がある。パックも打ってみたのだが、やはり前に進みながらだとなかなかスティックをうまく使えない。試合を見た後だから余計そう感じる。どのスポーツの世界でも、見ただけでは簡単に真似できないものだ。
そんなこんなで、初のアイススレッジホッケー観戦は幕を閉じた。アイススレッジホッケー東京大会は試合と体験会、さらにはプレゼントの抽選会もあり、本当に入場料無料でいいの、と思うくらい、イベントとして充実していた。このスポーツを本当に多くの人たちに知ってもらいたいと思わなければ出来ないことである。まだまだ世に知られてはいないが、毎年このようなイベントを続けていけば、競技人口、固定ファンも増えていくだろう。
最後に、広報・企画担当の樋口さんに質問。
―来年のパラリンピックではメダル候補なんですよね?
「いやいや、そんな滅相もない。でも密かに狙っています」
来年、そしてそれ以降も楽しみである。